玄関の奥に立つ陵介先輩を見て、一瞬固まっていたものの気まずそうに鼻を擦りながら挨拶をした先輩。


「陵介……久しぶりだな」

「昂良も元気そうだな」


かたや陵介先輩は嫌な顔をすることなく、ニカッと歯を見せて笑っていた。


二人は抱き合って再会の喜びを分かち合うのかと思いきや、ただ見つめ合って苦笑しただけだった。
けれどお互い照れくささを隠していても、表情が緩んでとても嬉しそうなのは分かる。


「お前変わってねーな」

「陵介は老けたんじゃねぇの?」

「男っぷりが上がったって言ってくれよ。嫁さんと生まれる子供持つとこうなるんだよ」

「ははっ、頼もしいな」


大袈裟に再会の喜びを分かち合わなくても、静かにお互いを懐かしむ。こういう時の男の友情ってかっこいいなと思ってしまう。


出迎えてくれた美香も優しい笑顔を浮かべて、二人を見ている。きっと過去のわだかまりが解けたことに安堵しているのかもしれない。


昂良先輩は今度は美香に視線を移し、はにかんだ笑顔を見せた。


「美香ちゃんも久しぶり」

「昂良先輩、私には老けたって言わないでくださいね」

「あ〜、すっかり母親の貫禄が……」

「それ褒めてます!?」


腰に手を当て笑いながら強気な表情で物言う美香に、先輩はポリポリと指で顔を掻いて困ったように笑った。


「とにかくここで立ち話もなんなので、入ってください」

「じゃあ、お邪魔します」


いそいそと靴を脱いで上がった先輩は陵介先輩に案内されて、リビングへと歩いて行った。


その二人の後ろ姿を見て、緊張するのも束の間に普段どおりの態度で会うことが出来て良かったと、ひと心地をついた。


私も続くように「お邪魔します」とパンプスを脱いだところで、美香が体を寄せてきた。


「あれから聞いてないんだけどー?」

「え……?あ、言うの忘れてた、かな」

「ほーぅ。報告するのも忘れるほど夢中だったんですかぁ」

「う……」

「まあ、前に報告受けた時から分かってたことだけどね〜。とりあえず後でじっくり聞かせてもらうから」

「……うん」


美香は私の腕を取り、ニヒヒと笑った顔を向けてきた。


「でも良かったじゃん。2人とも幸せそうな顔してるから、うまくいってるんだね」

「それは、そうだね」

「まったく。惚気ちゃって」


玄関先でギリギリまでイチャついてたのを目撃されたのは、親友とはいえ恥ずかしい。
けれど、私と昂良先輩が恋人同士となって二人に会えたことの方がなにより嬉しく思えた。