先輩、お久しぶりです


「あの、私最近ほんとに忙しいんです。ごめんなさい」


 半分ほんとで半分いいわけ。

 お昼は仕事もなにかとバタバタして食事が摂れる時間も不規則なのはほんとだし、仕事から離れれば今は先輩との時間を大切にしたい時期。
 だから昂良先輩以外の男性とプライベートで食事に行く気はない。


 チラッと先輩を仰ぎ見たけれど、無表情のままドアの方を見ているだけで何も言わない。


「それなら余計日にち合わせようよ。休日ならそのあと水族館とか行ってもいいじゃん」


 うん、伝わってないな……。


 食事どころかますますランクを上げてくる。これはもうさきほどの断り方にならってハッキリ言う!

「あのーー」と言いかけたところで昂良先輩が口を開いた。


「……むり」

「え? あ、なんなら藤井も来る? どうせなら千春ちゃんも誰か誘って4人でWデートとかしようよ。仲良いお友達誘ってくれていいし、ねっ」

「無理っつってんだろ、的場」


 あからさまに眉間に皺を寄せた不機嫌顔の先輩が的場さんを睨みつけた。


「ん? 藤井は何か希望あったりすんの?」

「もう千春に手は出すな」

「え? なに?」


 的場さんは意味がわからないといった感じでキョトンとしている。
 先輩は私を的場さんから遠ざけるように反対側に引き寄せると、肩を抱いて的場さんを牽制した。
 するとそれと同時にエレベーターのドアが開く。


「千春は俺のもんなんだよ。今後いっさい誘うな!」

「へ? え……それって」


 そう言おうとした的場さんの背中を無理やり押して、エレベーターから降ろしてしまった。


「そういうことだよ」


『閉』ボタンを素早く押しながら閉まっていくドア越しに睨みをきかせながら先輩はそう言い放った。
 そのままエレベーターのドアは閉まり、また上階へ昇っていく。