先輩、お久しぶりです


 いつのまにか外はすでに真っ暗で、かなり深けてきている。
 途中ソファの肘掛けに頬杖をついて、ウトウトしながら先輩の見るお笑いを見ていたけれど、そろそろ本当に帰らなければと声をかけた。


「先輩、私本当にもう帰りま――」


 と言いかけたところで、なぜか突然ドサッと膝に端正な顔が重くのしかかってきた。


「この方が観やすいから動くなよ」

「――っ!?」


(ヒ……ヒィ――――ッ!!)


 見てもないのにホラー映画のように、心の中で声にならない叫び声を上げてしまった。


 恋愛くらい経験したことあるのに、この中学生みたいな反応をしてしまう自分に驚く。
 失恋したとはいえ過去に好きだった人、しかも昔より格好良くなった人にこんなことされたら心臓だって暴れ出さずにはいられない。


 人の膝の上でやけにリラックスしながらテレビを見て笑っている。この有り得ない状況にあわあわとパニックになっている私は慌てて立ちあがろうとしたが、ソファの隅に追いやられて動けなくなっている。


「ちょっ、ちょっと先輩! 私ほんとにもう……」

「千春の膝の上、気持ちいい。これで耳かきされたら天国だな」

「はぁ!?」


 膝の上で自分のベスポジを求めてモゾモゾ動く先輩に挙動不審になりながら、この人は恥ずかしげもなく何を言ってるのかと変な声が出てしまった。


 さらに横向きだった体勢を変えて上を向いた。
 その拍子に至近距離で目が合ってしまい、なぜか一瞬甘い雰囲気が流れたことにドクンと心臓が跳ね上がった。


 私を見つめる先輩の顔があまりにもセクシーすぎて、下から見られていることに恥ずかしさが増す。
 いま、私がどんな顔してるのか自分でも分からないから余計に見ないでほしいのに。