先輩、お久しぶりです


 勢いよく止められて勘違いしそうになったけれど、それって昨日のうちにしておくことだよね。
 甘い雰囲気に耐えられなくて帰ろうとしたのに、今から私も付き合えっていうの?


「昂良先輩お一人で検索すれば……」


 そう言いながら逃げるように玄関へ向かおうとしたところで、私の前に立ちはだかり行く道を塞いだ先輩。
 見ると、必死な表情をしている。


「何回も言ってるけど俺じゃアイツらの好みは分からないから」


 そうかもだけど、でも……。
 加藤さんのことが何もなかったと分かった今は、なおさら二人きりでいることに戸惑ってしまう。

 今の先輩は私にとって気兼ねしない相手ではないのだ。


「千春、お願い」


 キリリとした眉は少し垂れ、鋭くなっていた眼光は柔らかく憂いを帯びている。なのに整った顔は崩れるどころか、むしろセクシーさが増していて……心臓に悪い。


「頼む」


 そんな風に必死になって、先輩がへりくだって私にお願いすることなんて過去にもなかった。だから余計に戸惑うのに。


 あぁ……もう。


「す、少しだけなら」


 そう言った途端、満面の笑みを浮かべて私の鞄を奪った先輩。別の場所へ置いてからソファに移動して急いでノートパソコンを開いていた。


 その素早さに半分呆れたような気持ちになりながら、少し離れて私もソファに座らせてもらうことにした。