キーコンカーコン。
 
春。入学式。

すれ違う人々の会話。

普通の人なら迷わず教室に向かうところ。

でも私は違う。

いつもの空間へ…。   


「高嶺さん!!」

「…。」



恐る恐る振り向くと顔をプクッとした私の
担任がいた。

先生にバレると思わなかった。 

やばい。どうしようかな。

とりあえず迷ったんだって言い訳を…。



「ちょっと!」

「かるた部の部室で何やってるの!?」

「教室が分からなくて迷っていました。」

「迷っていたら、ここに入るわけないでしょう?」

あ、たしかに。それでも、少しくらい良いじゃない。


だから、先生は嫌いなのよ。


そんなとき突然彼が現れた。


ガラガラ。


高嶺(たかみね)(あき)。」

「君の名前でしょ。」

「!?」

「あら、前田くんじゃない。」

「って、そんなことしてる場合じゃないの!」

「さっさと行くわよ。高嶺さん!」

「え、あ…。」

何だったんだろう。

さっきの男の人。確か、

「前田さん」って名前だった。

私の名前、知ってる人なんてあまり居ないのに。


でも、もう、会うことはないだろう。


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