コウキが私の部屋に、と案内してくれたのは、ほとんど物がない殺風景な部屋だった。ただ、壁に掛けられている一枚の額に入っているモノクロの写真がやたらと印象的だ。
「布団はクローゼットに入ってるはずだから好きに使って。風呂と洗面所とトイレの場所の説明はしたし、後の部屋の説明はまた後日」
と、必要最低限の説明をした後、コウキは部屋を出てどこかに消えてしまった。
取り残された私は、食い入るようにモノクロの写真に見入っていた。
これはコウキが撮ったのか?
街の喧騒の中でタトゥーを背中に沢山入れた上裸の青年がアスファルトに座りながら煙草を吹かしている。
私は写真や芸術に詳しい訳ではないけれど、美しいと思った。ずっと見ていられると思ったし、実際ずっと見ていた。
けれど、これがもしコウキが撮ったのならば、何故だかついさっき別れたばかりのコウキに会いたい、とも思った。