かつて村に災いをもたらせた悪霊が未だに封印されているという昔話が残されているせいか、こんな田舎の神社にも関わらず立派に手入れされて残されているのは、信心深い村人からの寄付のお陰だった。

参拝者も殆どが村民で観光客が秋魂神社に来ることはなく、過疎化が進む中、県外からの参拝者が増えるよう何かSNS映えするネタはないか、椿は考えていたが、悪霊が祀られている神社に華やかな物は何もなかった。

悪霊を祀っている為、他の神社とは少し境内の配置が異なり、鳥居、参道の正面に本殿はなく、鳥居と参道に対して90度横を向いていた。
これは悪霊が万が一逃げ出さないために横を向けているそうだ。

そんな工夫はあるものの、女子ウケする恋愛成就的なご利益も無ければ、出世や学業と結びつける物もなかった。

「御霊信仰とは言え、鎮めた悪霊を神様にして村を守ってもらおうなんて昔の人の発想ってすごいわぁ〜。神様になったんだから悪いことしちゃダメ!ってことでしょ〜。ついでにSNS映えする物も一緒に考えてくれれば良かったのに…」

参道の横にある池の鯉たちに餌をやり、境内落ち葉を竹ぼうきで集め終わると椿は高校へ向かう支度を始めた。