体育祭が終わり、またいつも通りの生活が始まった。
教室を見回すと、日焼けをしているクラスメイトも何人かいた。



「おはよう、花」



「あ、おはよう」



優衣が、教室に入ってきた。
優衣は、常に美容に気を遣っていることもあり、全然焼けていないみたいだった。



「おはよー」



税所くんが教室に入ってきては、わたしにそう話しかけてきてくれた。

税所くんも、こうして見ると焼けたんじゃないかな。



「おはよう税所くん」



わたしが挨拶を返すと、静かに頷きながら歯を見せて微笑んでくれる税所くん。


こうやって挨拶を交わしただけでも、なぜだか心に優しい光でも差し込んできたような、幸せな気持ちが溢れそうになってしまうのだ。


この微笑みを、ずっと見つめていたい。
もう、ここで時間が止まってしまってもいいから。



「おーい、陽介ー!」



しかし、時間が止まるなんてことはあり得なかった。



「なんだよ圭一!」



教室のドアのそばで、斉藤くんが税所くんを呼んでいる。



「これお前のだろ? 廊下に落ちてたぞ!」



「おぉ、気づかなかった。サンキュー」



視界にはもう、わたしに微笑んだ税所くんは見えなかった。