「花ー!」
税所くんのそばを離れると、向こうで優衣が手を振っている。
「優衣、お待たせー!」
「じゃあ食べよっか」
わたし達は、校庭の近くにある木でできたテーブルとベンチに座って昼ご飯を食べ始めた。
優衣のお弁当は、とっても可愛い。
なんでも優衣のお母さんは、キャラ弁を作ったりするのが大好きみたいで、いつもいろいろなお料理が可愛らしくデザインされているのだ。
「……かわいー」
思わず、優衣の水色のお弁当箱の中身を見て声を上げてしまった。
一瞬、優衣はきょとんとしてわたしを見たけれどすぐにニコッと笑って、お弁当箱の蓋にパンダがモチーフになったおにぎりを乗せてわたしに差し出した。
「はい、これは花が食べて」
「優衣……」
「だって、わたしのところにはもう1個、パンダのおにぎりあるんだもん。花だって、そのサンドイッチじゃお腹いっぱいにならないでしょ? あっ、そうだ。おかずとか野菜もいるね」
そう言って、1本の小さなウインナーと星形のアスパラガスも、その蓋に乗せてくる優衣。
「優衣の分……なくなるよ?」
「何言ってんの、まだまだあるし。花の体にも、ちゃんと栄養を入れとかないと。花のお父さんとお母さんが心配しちゃうでしょ」
なんて、まるで優衣はときどき栄養士さんみたいなことを言ってくる。



