「ここは…どこ」
見慣れない景色だ。まるでこの世のものではないような花たちが美しく咲き誇っている。
「お目覚めになったようですね」
「だ、誰ですか?」
声のする方を向くと白い服に身を包んだ男の人がいた。
「私は天の遣いです。お嬢さん…いえ、麻里さんはなぜ自分がここにいるかお分かりですか?」
「なぜって…なぜでしょう」
恐ろしいほどに美形の彼は天の使いだと聞いても違和感が感じられない。
「やはり…あなたはどうやら間違って連れてこられそうになっているようですね…全く、あの死神は確認というものをいたしませんから…」
「あの…つまりどういうことですの?」
「はい。あなたは誤って殺されそうに…魂をこちらへ連れてこられそうになっているようです」
どうやらそれが真実らしい。彼の世界一綺麗であろう瞳に吸い込まれそうになる。
「つまり…あなたは本来死ななくてもよかったもの…すみません。天界を代表してお詫びいたします」
美しい金色の髪を垂らしながら頭を下げる彼。
「私は帰れるのでしょうか」
「ええ。今あなたのお友達の咲さんと俊さんが死神を追い払おうとしてくださっているようです」
「俊さんが?…あんなに酷いことを言ってしまったのに…」
涙が止まらない。あの後何日も泣き続け、枯れたと思っていたのに。
「私と一緒に彼らの勝利を待ちましょう。必ず彼らはやってくださるはずです」
「はい!」
まだ自分の置かれている状況がよく分からないが、必ず救ってくれる。なぜかそれだけは信じられたのだった。