本当の恋とは言えなくて

お昼休みは子ども達がお昼寝をしてから。

眠っている子ども達の様子を気にかけながらしまっていたスマートフォンを手にする。

今日の会見が開かれたのか…確かめるために。



緊張して震える手でニュースアプリを開く。

パッと目にはいったのは
  
  『早すぎる婚約破棄に隠された真実』

と言う見出し。

きっと朝カズくんが言っていた記者会見の記事だ!そう直感した。ざわつく心で震える指先でモタモタとスクロールする。

記事と一緒に動画が添付されており黒のスーツで引き締まった表情をしている松下さんと、その隣には見たことのない、でもしっかりとした意思を目に宿す高身長の男性が並んで立っている姿が写っていた。
再生ポタンをタップする。

「先日発表いたしました私と駒山一翔氏との婚約につきましてお詫びと訂正を報告すべく、この度皆様にお集まり頂きました。」

一点の曇りもない表情で、淀みなく話し始めた松下さんと、その横に立ち穏やかな、それでいてまっすぐで強い光を宿した瞳で優しく松下さんを見つめる男性…

「お似合い」と言う言葉がついてでた。


「これまで菊水とホテルKOMAYAMA の政略的な目的で菊水の跡取り娘である私が花嫁修行、と称して副社長の駒山一翔さんの秘書を勤めてまいりましたが、先日発表させて頂きました一翔さんとの婚約を破棄する事により、今後菊水とホテルKOMAYAMAとの関係を一新させて頂きたく、ここに報告させて頂きます。また、今後はこれまで番頭として菊水を支え続けて来てくれた花岡生馬と正式に入籍し、今後は松下生馬支配人として菊水の正式な後継者といたしますことを合わせて誤報いたします。」


パシャパシャパシャ 

とシャッター音が鳴り響くなか、キラキラ輝く笑顔を見せる松下さんと花岡さんの姿はとても眩しかった。

「それでは、旅館菊水とホテルKOMAYAMAの提携無しでも菊水は継続可能、と判断された、と言うのとで間違い無いですね?」

記者の鋭い質問が飛ぶ。

「ええ、そうです。」


「つい先日には駒山さんと婚約を華々しく発表されたのは何故ですか?」

「それは…駒山のおじさまがワンマンで推し進めた勝手な妄想を否定し、いくら私と一翔さんの関係は結婚に至らない、と申し上げてもあの石頭では理解出来なかったので、仕方なく…と言ったところですかね」

辛辣な返答に会見会場がざわつく。


「実は私と私の父、親族だけでなく彼もホテルKOMAYAMAの株主であり、その株の総数は過半数を越えています。現在臨時株主総会を行い、駒山社長の解任を要請、一翔さんの社長就任を決定しているところです。この場に駒山社長、一翔さん共に不在なのはそのためです。」

あまりの事に頭をガツンと殴られたような衝撃が…

会見会場もさらにざわついていた。

「そういうことてすので、報告と訂正は以上です。
大変お騒がせいたしましたことを心よりお詫び申し上げ、会見を終了させて頂きます。」

キッパリと言い放ったあと、松下さんは花岡さんと腕を組み颯爽と会場を後にして行った。


呆気にとられ、しばらくスマートフォンをてにしたまま動けずにいた。