ホテルオオサキのエントランスは現代的で華やかな造りになっている。ホテルKOMAYAMA
が落ち着いた雰囲気の重厚感溢れるホテルだとしたら、ホテルオオサキは最新鋭の若者向けホテルといった感じだ。
カズくんにエスコートしてもらいながら震える足に気合いを入れ、エントランスをくぐった。
「これはこれは仲のよろしいことで」
嫌みを込め、敵意むき出しの声が聞こえ振り向く。
「社長。今お越しですか。」
カズくんが背筋をピンと伸ばし、とげのある声で話しかける。
あわてて私が腕に添えていた手をさりげなくほどこうとした時、ギュッとその手を上から握ってきた。
「社長、とは他人行儀な。父さんと気軽に呼べよと言っているのに。ハハハハハハ」
何がおかしいのか高笑いをする。目は笑っていない。威圧感と嫌悪感を感じとる。
「仲がいいのは大変よろしいのだが、ちょっと一翔をお借りしたい。お一人では不安でしょうから一翔の秘書の松下をそばに置こう。」
「社長…ですが…」
心配そうに私を見つめるカズくん。
「一翔、今日は完全なプライベートでは無いぞ。パーティーの始めにお前に一言を、と大崎会長から頼まれている。その打ち合わせもしなければならんだろう。」
有無を言わせないその態度に少したじろぐカズくん。
「カズく…いえ。一翔さん、私は大丈夫ですから。」安心させるように笑顔を向ける。
「副社長、相川さんは私におまかせ下さい。お一人ではご不安でしょうから。」
社長の後ろからスッと現れたのは黒のマーメイドロングドレスをスタイル良く着こなす秘書の松下さんだった。サラサラと流れるような黒髪から大きめのイヤリングが揺れているのが見えたが、そのダイヤの輝きにも負けないほどの華やかさがある。
一言で言って美しい。まるでモデルのようだ。いつものビジネススーツと控えめなお化粧姿に比べて格段に美しい。その洗練された美しさを前に、精一杯おしゃれをしたとはいえピンクの膝丈ワンピースドレスの自分があまりにも幼く見える気がして今さらながらこの場にいることに気後れをしてしまった。
「フゥ…すまない松下。紬をよろしく頼む。ごめんな、紬。」
カズくんは松下さんに頭を下げ、私の肩をポンと叩いてズカズカと前を進む社長の後を追って行ってしまった。
「さぁ、相川さん。ご心配なさらないで下さい。行きましょう。」
美しい笑顔で私の背中をそっと押してくれた。
(…?!えっ…!!)
まただ。
背中をそっと押してくれるために近寄った松下さんからカズくんと同じ柑橘系の香りがした。
思わず足を止めてしまった。
「…同じ…香り…」
無意識に疑問が言葉になっていた。
「…あぁ、香りに敏感な方ですか?気分を害されたなら申し訳ありません。」
サラッと髪をかきあげるとまたふんわりと香る…カズくんと同じ柑橘系の香りが。
「いえ、いい香りだなぁ…って思っただけですので。」
あわてて言い訳をする。
「ありがとうございます。これはフレグランスではなく、特注のアメニティセットの香りなんです。シャンプー、トリートメント、ボディーソープから化粧水、乳液など全て好みの香りに調合された世界に1つだけの香りのアメニティセットなんですよ。普段は使うことはあまりありませんが、やむを得ない時や特別な時に使わせて頂く事があります。」
妖艶に微笑みながら丁寧にしくれたその説明を聞いてガツン、と頭を殴られたような気持ちになった。
「せ、世界に1つだけの香り…」
ごくりと唾を飲み込もうとしたが喉がカラカラで飲み込むことができない。
「そうなんです。特別で、大切なものなんですよ。さ、参りましょうか。」
そう言ってフワッと上品に振り向き受け付けに向かって歩きだす松下さんからまた柑橘系の香りがふわりと香った。
いつもなら落ち着くその香りが今は私を不安にさせる。
(やむを得ない時…特別な時…使わせてもらう?!使わせてもらう…って事は自分の物ではないと言うこと?!)
カズくんの家の豪華なバスルームとパウダールームを思い出していた…。
が落ち着いた雰囲気の重厚感溢れるホテルだとしたら、ホテルオオサキは最新鋭の若者向けホテルといった感じだ。
カズくんにエスコートしてもらいながら震える足に気合いを入れ、エントランスをくぐった。
「これはこれは仲のよろしいことで」
嫌みを込め、敵意むき出しの声が聞こえ振り向く。
「社長。今お越しですか。」
カズくんが背筋をピンと伸ばし、とげのある声で話しかける。
あわてて私が腕に添えていた手をさりげなくほどこうとした時、ギュッとその手を上から握ってきた。
「社長、とは他人行儀な。父さんと気軽に呼べよと言っているのに。ハハハハハハ」
何がおかしいのか高笑いをする。目は笑っていない。威圧感と嫌悪感を感じとる。
「仲がいいのは大変よろしいのだが、ちょっと一翔をお借りしたい。お一人では不安でしょうから一翔の秘書の松下をそばに置こう。」
「社長…ですが…」
心配そうに私を見つめるカズくん。
「一翔、今日は完全なプライベートでは無いぞ。パーティーの始めにお前に一言を、と大崎会長から頼まれている。その打ち合わせもしなければならんだろう。」
有無を言わせないその態度に少したじろぐカズくん。
「カズく…いえ。一翔さん、私は大丈夫ですから。」安心させるように笑顔を向ける。
「副社長、相川さんは私におまかせ下さい。お一人ではご不安でしょうから。」
社長の後ろからスッと現れたのは黒のマーメイドロングドレスをスタイル良く着こなす秘書の松下さんだった。サラサラと流れるような黒髪から大きめのイヤリングが揺れているのが見えたが、そのダイヤの輝きにも負けないほどの華やかさがある。
一言で言って美しい。まるでモデルのようだ。いつものビジネススーツと控えめなお化粧姿に比べて格段に美しい。その洗練された美しさを前に、精一杯おしゃれをしたとはいえピンクの膝丈ワンピースドレスの自分があまりにも幼く見える気がして今さらながらこの場にいることに気後れをしてしまった。
「フゥ…すまない松下。紬をよろしく頼む。ごめんな、紬。」
カズくんは松下さんに頭を下げ、私の肩をポンと叩いてズカズカと前を進む社長の後を追って行ってしまった。
「さぁ、相川さん。ご心配なさらないで下さい。行きましょう。」
美しい笑顔で私の背中をそっと押してくれた。
(…?!えっ…!!)
まただ。
背中をそっと押してくれるために近寄った松下さんからカズくんと同じ柑橘系の香りがした。
思わず足を止めてしまった。
「…同じ…香り…」
無意識に疑問が言葉になっていた。
「…あぁ、香りに敏感な方ですか?気分を害されたなら申し訳ありません。」
サラッと髪をかきあげるとまたふんわりと香る…カズくんと同じ柑橘系の香りが。
「いえ、いい香りだなぁ…って思っただけですので。」
あわてて言い訳をする。
「ありがとうございます。これはフレグランスではなく、特注のアメニティセットの香りなんです。シャンプー、トリートメント、ボディーソープから化粧水、乳液など全て好みの香りに調合された世界に1つだけの香りのアメニティセットなんですよ。普段は使うことはあまりありませんが、やむを得ない時や特別な時に使わせて頂く事があります。」
妖艶に微笑みながら丁寧にしくれたその説明を聞いてガツン、と頭を殴られたような気持ちになった。
「せ、世界に1つだけの香り…」
ごくりと唾を飲み込もうとしたが喉がカラカラで飲み込むことができない。
「そうなんです。特別で、大切なものなんですよ。さ、参りましょうか。」
そう言ってフワッと上品に振り向き受け付けに向かって歩きだす松下さんからまた柑橘系の香りがふわりと香った。
いつもなら落ち着くその香りが今は私を不安にさせる。
(やむを得ない時…特別な時…使わせてもらう?!使わせてもらう…って事は自分の物ではないと言うこと?!)
カズくんの家の豪華なバスルームとパウダールームを思い出していた…。



