「やっほー」

可愛らしい声がして、後ろを振り返ると、そこには白ずくめの少女がいた。

「エ...ト?」

「正解!まぁ色々あってこの姿だけど...そんな事はどうでもいいの!早く貴方の話をしましょう!!」

何故少女の姿なのか少々疑問に思うが、エトが話を切った時点で、追求してもいいことは無い。

(それに今回はあの表示について聞くつもりだったし...)

「そうそうレベルについて話したかったのよ私は!!」

レベルについて話すのがそんなに楽しいのか、今日のエトはすこぶる元気だった。

「じゃそのレベルとやらの説明をお願いします。」

「うんうん...よろしいーじゃーそこ座って!」

私は言われるがままエトとテーブルを挟んで向かいに座ると、エトはその小さな体で私にお茶を用意してくれた。

(カッかわいいぃ)

「心の声は聞こえるんだからいいなら直接言ってよね...まぁ...ありがとぅ。」

そんなふうに恥じる姿も一段と愛おしかった

「じゃまずレベルの話をする前に、加護の話をするね。」

エトいはく......
加護とは、それぞれの神がその者に祝福を与えるものではないと
それぞれの者が生まれた瞬間にいくつもの道を持っていてそこ結果が加護に繋がる神はただ見ているだけに過ぎない
道それぞれに試練が存在し、私たちはいつの間にかその試練を超えたことで、一定数の能力を得ることが出来ると

それを人は神の加護と言った

「じゃあ今まで私がずっと淑女の加護だったのって...」

「シャルがずっと子どもの頃から頑張った成果だよ。」

「そう...」

なんだか今までの頑張りを評価されていた事に私は涙ぐむ。私は将来皇后としてしっかりとしなくてはの一心で、お父様やお母様、ジルベルトお兄様、ミッシェルなど色んな人に心配されながらも、淑女の鏡のような人生を歩んできた。いや、そうしなければいけないと勝手に思い込んでいた。

「じゃあ私は今世で違う道を選んだんだ...」

「そうだね....っでレベルについてなんだけど」

レベルはエトが加護の能力を分かりやすくするために、他の世界にあった概念を利用し創造したんだとか....

「ってか他の世界?」

「あーそこは別に何でもいいのよ。神様には神様の秘密ってものがあるの〜言わいる神秘よ。」

小さくなったエトは地につかない足をバタバタさせながらそう言った。

「じゃあ今世では誰もがそのレベルってものを持ってるの?」

「そそ、あそれとステータスってのも創造しといたから。ステータスオープンって言ってみ。」

「ステータス?オープン...」

ピッコン

シャロル(シャロル・エト・ヴァンビルゼ)

レベル:1

体力値:10
魔力値:300(最大能力100000)

称号:神の愛子(いとしこ)
時空放浪
彷徨う者

「何これ...」

「あー確かに曖昧だよねーレベル上がればもっと俊敏値とか幸運度とか項目が増えるから〜」

私が言いたいのはそんな事じゃないが、これから面白くなりそうだと思った。

「でしょでしょ!!ずっと小説読んでていつかこんな設定書きたいと思ったんだよ〜って今のなし...」

エトの謎な発言に疑問を抱いた。

(小説...設定を書く?)

「あっそういえばそろそろ夏の洗礼の儀かー私も忙しくなるわねーあんまりそっちに行けなくなるかも...じゃー時間だじゃねー」

パチンッ

「えっちょまってー!!」
_._._._._._._._

ドンッ

「痛っ」

気がつくとそこは皆で寝ていた寝室で、窓からは朝日が登っていた。

「痛たた〜」

「シャルねぇちゃん!!大丈夫かよ?またあれか?夢遊病ってやつ...」

私がベットにから落ちた所を、カリーはベットの上から見下ろす様に見ていた。

(それにしても夢遊病かぁー)

私はその病に懐かしさを感じた。何周期目の事だろうか、夢遊病になった事もあったなっと。それで、ベランダから落ちて死んだなっとそう懐かしんだ。

「大丈夫よカリー!!夢遊病になんかもうなったりしないから、今のはちょっと寝相が悪かっただけ。」

「そっか...ならいいんだけど...」

カリーはそう言いながら、ベットから降り、靴を履くとベットメイキングをしだした。
私も慌ててそれに習うと、朝ごはんを呼ぶ声がした。
寝室を出ると、テーブルには、私とカリーの分のスープとパンが用意されていた。

「おはようシャル、カリー。私はもう出るからいつものように洗い物と、洗濯お願いね。」

そう言ってソリアは自分の支度を始める。
私たちはと言うと寝ぼけながら席に座り、朝食を食べ始めた。
私たちがゆっくりとご飯を食べているうちにソリアはもう支度が終わり。行ってきますと言い終わる前にはドアが閉まっているほど、慌ただしく家を出ていった。

ソリアが出ていくと、家が沈まった。
今日はドムリは朝番らしく、エンディーはここ最近住み込み見習いへの試験勉強で早く出ることが多くなった。

ゴーン...ゴーン...ゴーン

「あっやべ!早く食べるぞシャルねぇちゃん!!」

「うっうん!」

3回鐘がなると私たちはいそいそと朝食を食べ始めた。
三の鐘と呼ばれるこの鐘は仕事開始の合図とされていて、どの職場もこの鐘を合図として仕事を始める。
そして、洗濯場で石鹸が配られる合図でもあるのだ。

いそいそと食べるも、カリーの様にバクバク食べれる訳もなく私は途中で諦め、カリー共に洗濯籠を持って洗濯場まで駆けだした。
_._._._._._._

「「おはようございます!!」」

私たちはまだ少し、息の上がる声でこの区画長であるメリーに挨拶をする。
私が貴族の頃は石鹸なんて普通に使っていたが、平民はそうでは無いらしく、それぞれの区画長が洗濯の時だけ持ってきてくれるのだ。
ちなみにここ王都は貴族街と呼ばれる1区画から20区画まであり、ここは13区画というところにある。

「おはよう!!シャロルにカリー。」

メリーは元気な人で、そのふくよかな体と栗色のショートヘアーがよく似合うひとだ。皆からメリーおばさんと呼ばれ親しまれている。

石鹸を貰った私たちは早速洗濯に取り掛かった。すると、いつものようにネネが近寄ってきた。

「シャルー!!おはよう!!」

「お...おはよう」

随分と元気なネネに呆気に取られつつ、私はすぐさま笑顔で答えた。

「聞いて!聞いて!今日ママが洗礼の儀の服をね作ってくれるんだ〜」

「えっいいね!!」

平民の子のほとんどは、お母さんが洗礼の儀の服を作ってくれる。だからこそ、針子の職に就く母たちにとっても、洗礼の儀は戦いなのであった。

その後もネネによる最近のワンピースの流行などの話をして盛り上がり、洗濯が終わった。

今回の帰り道はいつもより、多く洗濯を持った。

(あ!!やっぱ体が軽い!!)

レベルが上がったせいだろうか、どこか浮かれ気分でスキップしていると、洗濯物をひとつ落としてしまった。

「「あっ」」

カリーと声が揃いどうしようかと顔を見合わせた。

「大丈夫か?」

どこか強い口調でそういうと、声の主はスっと洗濯物をとり、手で汚れをはらってくれた。
そんな事では落ちなそうなものなのに、汚れは見る見るうちに消えていく。それどころ布の痛みも消えていきまるで新品のようになってしまった。

(今のは...魔法?)

「はい...」

フードのでせいで顔は上手く見えないが、ぶっきらぼうに、しかし綺麗に畳んで洗濯物を渡してくれた。

「あっありがとうございます!」

私は洗濯物から顔を上げ、フードの男?に向かって言った。

「....君は...いや勘違いか...では。」

何か目的があるのかそのフードの男?はさっさと去っていってしまった。

「何だったんだ?あいつ。」

「さぁー??」

カリーにそんなことを聞かれても知らない声だった様に感じる。

(誰だったんだろー)

その日はそのフードの男?のことが頭から離れなかった。