そんな事を考えながら 医局に戻るとすでに19時を超えていた

”とっても汗をかいてるし、シャワーを浴びたい”

シャワールームが空いているみたいだし、今なら誰もいない。
着替えを用意して、医師専用の医局のシャワー室にはじめて行った。

シャワーの音でかき消されて私は”そんな状況”になっていたなんて
知らなかったから、シャワー室から出ると驚いてしまう。
俊がドアから少し離れた壁際に両腕を組んで立っていた。

私をみつけた途端に彼は速足で私の傍に来ると、腕を掴む。
そして、いきなり怒った顔で叫んだ

『何でここでシャワーなんか使うんだッ!危ないだろう!』
「えッ どういう」

俊が私の反応を無視するかのように、腕を掴んで無言で歩き出す。
グイグイ引っ張ってシャワールームと隣接する当直室のドアを開けた。
数室ある当直室には今、誰も使っている様子はない
ドアを開けて、乱暴に私をその真っ暗な当直室に入れると、自分も部屋に入り
扉を閉めると私の顔をみてくる。

「何するの?! 離してよ 」

そんな風に言った私は俊が掴む腕を振りほどき、
すると彼は突然に私の唇を塞いでくる。

「う・・なッ・・」

彼からの強引なキスに戸惑う私は、最初は何が何だかわからなくて、彼の胸を強く押して抵抗した。それなのに、彼の噛むようなキスに抵抗を忘れ受け入れてしまう。
やがて、俊は私の唇から離れ、大きなその手で私の頬を包み込む。
両頬を触れながら、せつない表情をする俊が

『ごめん・・酷いことして』

返事なんて出来ない。 
また後悔してしまうから、黙ったまま彼の瞳から目を逸らしてしまう。

『薫、こっちを・・僕を見て』
「・・・・」

嫌だ、私、傷つくのが怖い。彼のこのぬくもりを手放したくないって思うのに湧きあがってくる不安感に押しつぶされそうになる。そして思わず零れてしまった言葉。

「・・もう、こんな関係は嫌です!」
『薫!』


俊の呼びかけに応えず、心を知ろうともせずに部屋を出た。