〔恋愛yes,no〕


『もう、こんな時間なんだ』

時計を確認すると、午前4時半を過ぎる頃だった。

セミダブルのツインの部屋なら可能だと言われ、アーリーチェックイン
が出来て良かった。部屋に入ると、また暗い窓の外に目を向けながら、
目の前に海が広がっているのを感じた。

立ち尽くす僕たち、薫は戸惑っているようにみえた。
僕も彼女も、今日は酔ってもいないのだから言い訳だってできない。
僕は薫にシャワーを先に使うように言って彼女をみると、一瞬合った視線を逸らし俯く。

『バスロープは浴室にあるから』

黙ったまま薫は浴室に向かった。
その姿を目にして、こんなに平然として手際のいい自分に薫は不安になっていないだろうか?
確かな事があるとすれば、僕が薫に惹かれているのは間違いない。 
自分が薫の事を気にしていることをはっきりと自覚したのが数日前だ。
だが、薫の気持ちはどうなんだ?
こんな風に事を進めて、許されるんだろうか?

薫が欲しい、と思う反面、今か?と疑問を抱く。
二人とも、充分に大人なのだから、嫌なら拒絶だってできる。
珍しくネガティブな考えが浮かんでしまう。

僕の今までの女性に対しての姿勢が、自分をそんな気持ちにさせて
しまうのだろう。
それなら、しっかりと薫に向き合って気持ちを伝えるのがイイだろう。

画像を目で追うだけで音は出ていないTVを見ながら、
”らしくない自分(おとこ)”に初めてなっていた。