「あの・・先生? どうかされました?」
『えッ?ああ~ッ悪い・・何?』


僕の言葉に薫がクスクスと笑いだし、、
「お疲れですか? 連日、カテ(心臓カテーテル検査)を数十人こなして入院患者の継続治療ですよね。私だったら、とっくに倒れていますよ」

『うん・・そんなに大変な事じゃないって思うように努力してるんだけど、
さすがに少し疲れて来たなぁ。ふ~~ッ』

首を回しながら、そんな風に話すと薫が椅子から立ち上がった。

「休み明けのカンファレンスの前にって思って読影(どくえい)をはじめて
しまいましたが・・少し、休みます?何か飲まれますか?」
『ありがとう・・・あッ、でも遠慮しとくよ』
「どうしてですか?」
『実はね、最近医局のコーヒーばかり飲んでるもんだから、胃がね』

「胃の調子が悪いんですか?」
『うん、たまに痛みがあって。今も少しだけ・・』
「痛むんですか?」

薫が僕の顔を覗き込んで心配する顔をみせる。疲れているから、マジな事実を伝えてしまい、僕の頭も回らない状態にまでなった。

『いや、少しだけだから大丈夫だよ。さぁ、もう遅いし大澤先生は帰っても良いよ。明日は君だって久しぶりの休みだろう? どうぞ、ゆっくりして』
「でも、片瀬先生は?」
『う~~ん、僕はもう少し残ってかないと』

少しだけ悩んだように黙った後、薫は僕に笑顔を向けた。

「そうですか、それじゃ、私はお先に失礼しますね」
『うん、お疲れッ』