医局の扉を開けると、ドア前がラウンジのように何個もソファが置かれていた。
それを抜けて行くと、それぞれ二人ずつのブースがあって机が並べられている。
僕は身長があるおかげで、周りのブースの中が見渡せるのだけど、
『ほんとに医者の机かよッ! 汚いなぁ・・』

どの医師の机も本や雑誌、それに飲みかけのコーヒーとかお世辞でも綺麗だとはいえない。まるで地震が来た後のような状態だ。

「お前はこの机だ、それから横に今日から入局する医者が来る事になってる。
外の大学からだからお前、面倒みてやってくれ。
いずれはわかるだろうが、相手しなくちゃならないはずだ」

『相手?何の?』
「聞いてないのか?! 彼女の事。」
『彼女?』
「まぁ、イイ。後でゆっくり教授から話して頂けるだろう。そろそろ来るんじゃないか」

大月が腕時計を見ながら、そう呟いた。
キラキラ光輝くその腕時計は”ロレックスディープシー” 深海の気圧にも耐えられるっていう夢の時計、コイツ 買いやがったッ!

「ん?何?」
『いや、その時計、イイもの持ってるなぁ~って』
「あん?ああ~ッこれはプレゼントさ。坂上教授のお嬢さんからバースディのね」
『プレゼント?凄いなぁ。そんなの貰うって。あッ!じゃあ』

大月が自慢げに、自分の腕にある時計を僕に見せてきたプレゼントって。
坂上主任教授のお嬢さんからなのか、あ~って事は。

「まぁ、そうだなぁ。そういう事だよ。お前、お嬢さんに手を出すなよッ!」
大月が凄く眉根をよせて、僕にそう言って来た

『オイオイ、僕が手を出すわけないだろッ!』