「・・はい、どうぞ」

薫の父親である大澤学長と義母、そしてその後に舞子が顔をみせた。そんな三人が僕を見て驚きの表情になった。昨日、薫の電話で優人が入院した事の連絡だけしたらしい。僕に関しての事は何も伝えていないのだから、ご両親が驚くのも無理はない。

『お父さん、お母さん、お久しぶりです』
「片瀬くん、君が何でここに? 薫、これはいったいどういう事だ?」

驚く父親は、状況がのみこめない様子で薫にそう尋ねたが、横から我慢できないとばかりに顔を強張らせた舞子が詰め寄ってきた。
「お姉ちゃん!何で、何で俊先生と一緒にいるの?!どういう事よ!」

薫はとっても困った顔で答え始める
「あのね、優人がアナファイラキシーを起こして、命も危ない状況だったの、偶然だったんだけど、それを俊が助けてくれたの、、それから」
『薫、後は僕が話すから、君は優人を見てて。お父さん、あちらで良いですか?』
「俊先生、何もお姉ちゃんをかばわなくたって」

ムッとして口を尖らせた舞子がそう言うと、『優人に聞かせたくないんだ。あの子には関係のない事だから』と僕は伝えた。
空いてる部屋を借りて、移動すると、舞子が聞きたくないと言って泣き出した。
『舞ちゃん、君にもちゃんと聞いて欲しい。とっても大事な事なんだ』


大澤学長(父親)が口を開いた
「片瀬くん、君は優人の事を、、その、知ったのか?」
『はい、優人が僕と薫さんの子供だって、やっと知る事が出来ました。そして、ずっと誤解していた事もわかりました。薫さんが結婚して幸せでいると思っていたんです』
「薫が自ら望んだ事だ。私や君のためにあの子は随分苦労した」

『はい、彼女が受けた苦しみは計り知れない程です。そんな彼女を助ける事もせずに僕はアメリカに逃げた』
「いや、、薫が君との事を望まなかったんだ」

『最初はどうしても理解できなかったんです。なぜ、僕を避けようとするのか、でも、わかりました。彼女は僕のために自分を犠牲にした。そして、また今度も、、、僕は薫さんと僕たちの子供を幸せにしたい。そう改めて強くそう思いました。お父さん、薫さんを僕に下さい』