真実


こんな風に泣かせるつもりなんてない。薫の頬を包み込むと親指で涙を拭った。
薫が僕の瞳をじっとみつめると、どうにも胸が痛んでギュッと抱きしめたくなる。

『薫、泣かないで。お願いだから、もう何も考えずに僕だけをみていいから』

しかし、その言葉に薫が首を横に振って俯く

『・・・何で僕に頼れない? 僕の事が嫌い?』
「そんな事は有り得ないわ」
『僕は、君を愛してる。今までも、そしてこれからもだよ。この気持ちは絶対に変わらない、信じて欲しい』

「・・・・私は、私は、あなたの傍にいちゃいけないの。あんな事があって、、だって私、あなたに相応しくないわ。あなたに迷惑をかける日が必ず来るし」
『相応しくない? 何を言うんだ?!迷惑だと?そんな事、勝手に決めるな!』
「でも、事実なのよ、私は、、あの男に」

彼女の言葉を遮り、
『薫に起こった悲劇は変えられない。だけど僕にとっては薫はかけがえのない大事な女性(ひと)なんだ。世間を気にして、僕は君を諦め僕たちの子供にも会わずに、僕にひとりで寂しい人生を送れっていうの?そしたら迷惑じゃないと?』
「俊、あなた、酷いわ」
『酷いのは君だよ、君が結婚してしまって、子供も出来て幸せな生活を送ってるって、僕はずっと2年も勘違いさせられていたんだよ』
「・・・・」
『薫、とにかくこれだけは約束して欲しい。 僕たちは二度と離れない』

僕は薫の身体を引き寄せて優しく包んであげると、彼女の細い身体をぎゅと抱きしめる。そして耳元で、彼女に言い聞かせるように呟いた。

『一緒に幸せになろう』

離れている二年半の間、ずっと閉じ込めていた感情が堰を切ったようにあふれてしまう。きっとそれはお互いにだ
抱きしめられたままの薫が僕に言った。

「この子がね、優人がね、、私をいつも支えてくれたの。あなたと同じ笑顔で、、だから耐えて来れたの」