子供が横になるベットをはさんで残された僕と薫は、子供の顔を見て沈黙する。それに耐えきれなくなった薫が病室を出て行く素振りをみせ、僕はその薫の腕を掴んで、振り返った瞬間肩を掴んだ。そのまま壁に押し付ける格好になる。
一瞬驚いた薫は僕を見上げて来た。

『薫、待って、説明してくれ! どういう事なんだ?!』
「俊、違うの、、みんな誤解してるだけで」
『誤解なんかじゃないはずだ! この子は僕の息子なんだな?!そして、君には夫なんかいない!? そうだろ?!』
「・・・・」

薫が返す言葉を失い、困ったように顔を背ける。そんな薫に僕は眉を寄せて苛立ったように畳み掛けた。

『何で返事が出来ないんだ!? どうして・・どうしてそんな嘘をつく?』

薫が僕の瞳をじっとみつめた。
涙の膜がたっぷりと張られていて、はらはらとその涙が落ちる。
彼女の肩に手を置いているが、微かな震えが手のひらに伝わってきていた。