if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~


救急室に優人を運んで、診察ベットに横にさせた。
挿管チューブが唾液によって閉塞されそうになっている。看護師に吸引をお願いし、薫は優人の心臓に耳をあて心音を確認した。
「大丈夫、吸引してください!それからモニターをつけてください! 血圧は?」

そこに救急室のドアが開いて、俊が飛び込んで来た。
診察台でグッタリしてる子供の前で、薫が当直医と一緒にいた。

『薫! どうしたんだ?!』

薫は突然に聞こえた愛しい人の声に顔をあげ、まとまらない叫びを口にした。

「俊? 大変なの 優人が、、優人が、、」

俊の母親が救急室の壁際から声をかけた。

「俊ちゃん、子供を助けて!」

俊はすかさず診察台の優人のそばに行き、状態を確認する
『何が原因? 窒息、それとも他に?』

「この子、アレルギーで通院してたの、きっとアナフィラキシーだと」
『エピネフリンは?』
「救急車の中で打ったわ。血圧も下がって、、心音が微弱なの」
『気管の吐物は除去した?』
そうだ、さっき看護師にお願いしたけど、、俊の質問に首を横に振った。
当直医が怯んだ表情で俊に言う「僕は研修医なんです」

俊は優人の顎を上げ気道の確保をすると、大声で叫んだ。

『再挿管だ! 小児用チューブかして!』

同時に看護師の無情な声がした。
「あの波形が、、レートが40・・30・・20・・ドンドン落ちています!」

優人につけられた心臓の動きを意味する波形の周期(なみ)が伸びていて、今にもフラット(心臓が止まる)になりそうだった。俊の大声が響いた。

『心マ、はじめる!DCをチェージ準備して!』
「優人! 優人!」

私は叫ぶしかなかった。目の前で俊が最善を尽くして処置をしてくれている。
「お願い、、この子を助けて」

後から俊のお母様が叫んだ。
「俊ちゃん、助けてよ! 優人はあなたの息子で、私の初孫なんだから!」

処置をしていた俊の手が一瞬止まり、後にいるお母様をみた。そして、私に振り返る。