俊先生のお母様に、「どうしてもお話をしましょう」って誘われて、私はそのまま坂本先生へのお礼の伝言を頼んで、坂本先生のお母様と別れた。

別れ際、坂本先生のお母様が私に優しく言ってくれた。
「薫さん、あなたはとっても頑張り屋で、息子が好きになるのがわかったわ。でもね、息子の一人相撲かしら? 女性が子供を育てながら一人で生きていくには大変な世の中よッ! 本当にあなたさえ望めば、私たちもう一度会いましょ?」

坂本先生のお母様は、彼のように本当に優しいお母様だった。横でその言葉を俊のお母様も聞いていた?
ううん、きっと優人と遊んでくれていたから・・大丈夫だって思っていた。


坂本先生のお母様をお見送りして、俊のお母様のところに行った。
俊のお母様は優人を抱っこして、顔遊びをしていた。
何だか微笑ましい。
私は暫くその様子を見とれてしまった。そんな私に気づいたお母様が笑顔を私に向ける。

「お母様、どこでお話します? っていうか、こちらのホテルに?」
「うん、そうよ。そうねぇ・私の部屋でいい?」
「良いのですか?・・この子もいるし」

俊のお母様は優人を抱っこしながら うんうんと嬉しそうに頷いた。
お母様の部屋まで優人を抱っこしてくれて、
・・・そういえば、本当のお祖母ちゃんなんだわって思った。

私がそんな事を考えながらお母様を見ていると、お母様が私の視線に気づき、「なぁに?」って聞いてくる。

「い・・いいえ、何でもありませんよ」
「薫ちゃんは、変わらず可愛いわね、俊が忘れられないはずよね~」

「お、お母様、そんな」
「まぁ、せっかく会ったんだから今夜はゆっくり女同士 話しましょ!」

そんな偶然で、私は俊のお母様の部屋にためらいもなく入ってしまったのだった。