坂本先生は、何度も汗を拭きながら、お母様の言葉にアタフタして・・また違った坂本先生の一面を見た気がした。きっと、男性は母親と一緒の時に本当の自分が出せるのかもしれない。
それに気がかりだった事がひとつ解決した。坂本先生のお母様には私たちの関係を理解して貰えたと思う。お食事会は終始、穏やかに進んでいたし、、
時間が経つと、慣れていない場所だからか、優人がちょっと眠くなってぐずりはじめてしまう。珍しい事だ。 

坂本先生が車を駐車場からホテルの玄関口までまわしてくれると行った。その間に優人の面倒をみてくれると、坂本先生のお母様に言われ、私は洗面所へ向かった。
なるべく迷惑をかけないようにと急いでその場所へ戻ると、私は信じられない光景を目にした。

ホテルのラウンジのソファに座るふたりのご婦人、一人はさっきまで私と食事を楽しんでいた坂本先生のお母様、そして優人を挟んで横には彼の、俊のお母様が座っていた。

「お・・お母様?」

私はあまりの驚きで足が動かない。
そんな私に気づいた坂本先生のお母様が私の名前を呼んだ。

「あらッ! 薫さん、どうしたの?!」

「か・・薫ちゃん?!」 俊のお母様が私を見て目を丸くして驚いていた。

坂本先生のお母様が一人で優人の面倒をみている時、私のいない事に気づいて、私を探して泣き叫んでいたそうだ。そんな泣き声に慌てたお母様を心配して、偶然に通りかかった俊のお母様が優人をあやしてくれたのだそうだ。

はぁ~世の中は本当に狭い。

俊のお母様は私に逢うとすごく驚いていたけど、すぐにそれに合ったジョークを飛ばしてくれた。

坂本先生のお母様に対しては ”どんな関係で?”と聞かれれば「う~~ん娘みたいな、、いえいえ、やっぱり嫁かしら?」って。
坂本先生のお母様が驚いて「あらッ! うちもそーだわ」なんてお互いに笑いあっていた。