「薫さんですね、はじめまして、大樹の母です。息子からは、よく薫さんのお名前を聞いてましたのよ。ご一緒にできて嬉しいわ。お子さんも可愛いわ! おいくつ?」
「ああ、はい、2歳になります」
席に着くと優人が坂本の腕の中から、母親である薫の元へ行きたがった。薫はそれを感じて優人を受け取る。
「ごめんなさい。ほら、優人、こっちにおいで」
その様子を見ていた坂本先生のお母様が私に言った
「優人くんのお父様は?」
「母さん!薫さんに失礼だよ! 薫さん、悪気はないんだ、ごめんなさい」
「何を言ってるの?!私は当然の事を聞きたいだけよ。もしも、生き別れなら今後に関係してくるでしょ? ねぇ、薫さん?」
本当に悪びれずに聞いてくる坂本先生のお母様に、私は少しだけ苦笑いをしてから話した。
「優人の父親はいません。ですけどお母様、今後も坂本先生には優人の主治医にはなって頂きますね。それ以上は何の関係もありませんからご安心ください」
坂本先生のお母様は驚いた顔で瞬きをすると、目尻を下げて微笑んだ。
「あらッ薫さん、それは駄目よ!! あなたを大樹のお嫁さんにって思ってるんですから」
「母さん!また余計な事を」
坂本先生が焦りながら 私にごめんねというポーズをとる。
「お母様、誤解です。私は坂本先生に本当にお世話になっているだけで、坂本先生とはそんな関係ではありませんし・・ね」
「あ~ッ あははッ」



