俊の宿泊するホテルから自宅に戻った舞子は、ためらうことなく俊の母親に電話を入れた。アメリカにいる時に、俊のもとに送られてきた母親からの荷物に連絡先が書かれていたため知っている。
舞子にとっては大きな賭けに出たつもりだったのだろう。


「片瀬俊先生のお母様ですか?・・・ええ、そうなんです。
私、俊先生とアメリカにいる時に仲良くさせて戴いて・・・ええ
一緒に日本に帰って来たんですよ。お母様にぜひお会いしたくて・・
そちらに行ってもよろしいでしょうか?・・・ああ・・はい」

舞子は俊の母親と連絡をとって、母親が上京する事になったようだ。
親に認められて、俊を振り向かせたいだけの行動だった。




俊と薫の間には、大きな障害がまだまだ待ち受けているのかもしれない
惹かれあうふたり、理屈じゃない ただ心が叫ぶ

この愛する人と一緒にいたい

ホテルの一室、電灯もつけずに暗い部屋で寄り添う男女 
ふたりは窓から見える都会の雑踏をみていた。
俊は薫の後ろに立ち、肩まわりに頭を寄せ、しっかりと薫の身体を引き寄せ後ろから抱きしめている。
互いの指を固く結ばせて離れない。
いつまでも動かないままのシルエットが 窓越しに見える冬空の明るい月に照らされていた