私は俊に真実を伝えて楽になりたい?・・で、どうするの?
今、心のままに真実を伝えても、そうすれば私達・・許されるの?
それに、舞子だって、あんな風に私を責めた。俊を好きだから・・


『どうした?』
「あのね、行き先を変えて、マンションじゃなくて、、今日だけは時間があるから、あなたと一緒にいたい」

私のマンションの近くだが、芝公園でタクシーを一緒に降りる。12月の今は夕闇が迫るのが速い。通りをLEDで飾られたイルミネーションを俊から抱き寄せられた腕越しに眺める。
俊の宿泊しているホテルは日比谷だから少し距離はあるが、街並みをふたり一緒に歩ける幸せに胸が躍る。

『久々の東京タワーだな』
「今日は赤いタワーなのね」

都会の喧騒さえ、今の私たちには共有できるもの、車のクラクションや人の声、ビルに映る映像やディスプレイは現状を一時でも忘れて歩き続ける私たちに安心を与えてくれた。

「俊、あのね、今だけ、今だけなのよ、あなたはまたアメリカに帰るでしょ?」
『君がここにいるなら、僕は君から離れないよ』
「俊、それは出来ないわ」
『僕は君ともう別れたくないんだ』
「無理なの。私には俊と一緒の未来はもう・・・ないから」


俊を苦しめる事になるだけの関係だから、俊とは違う道を選んだじゃない。
やっぱり俊に本当の事を言えない。
ベットに横に並んで腰かける俊をみつめて涙が溢れてしまう。
優しいまなざしを向けていた俊が、むっと表情を歪ませた。


『嫌だ!ダメだよ。そんな事を言うなよ』
「でも、それでも私には子供も、、、主人だって」
『わかってる。だけど君を愛してるんだ! お願いだ、薫が他の誰かと一緒にいるなんて、気が狂いそうなんだ』

俊が両手で頭をかかえ苦悩に満ちた表情になった後、低く冷静な声で私を見つめながら呟く。
『僕は君を誰にも渡さないって決めたんだ。 僕はもう二度と、諦めない』

「そんな、無理よ」
『無理じゃない!薫は、僕を愛してくれてるだろ? 君だって僕じゃないとダメなんだ・・そうだろ?』
「・・・・」
『それとも僕より、ご主人を愛してるって言うのか?』
「俊、やめて」

薫を前にして、嫉妬を隠すことなんて出来なかった。
大人な男なら、彼女の幸せを一番に考えるべきなのに。
グッ、と腰に回した腕に力がこもり、より強く引き寄せて彼女の唇を塞いだ。

短いキスの後、彼女が俯きながら切なげに僕に言った。

「お願い、そんな事を言わないで」