『何?どうかした?』
「うん、今日の俊先生、何だかオカシイよ。人が違うみたい」
『えッ?ああ、そうかなぁ? あはッ ちょっと疲れてるのかなぁ』

舞子は僕に不審そうな顔つきで、そう聞いてきたけど、大きく息を吐きだすと話題を変えて来た。


「俊先生の田舎って福岡だったわよね?」
『うん? なんで?』
「前にお母さんから電話来たみたいな事を聞いてたから。ねぇ、帰らないの? 帰ってゆっくりすればいいのに、そしたら私も付いて行こうかなぁ~?」

『ああ、帰んなくてもね、あっちから東京に出てくるんじゃないかな?』
「えッ? そうなの?」
『ああ、うちの母さんは東京が好きだから、よくこっちに来てるみたいだよ』

「ふ~~ん、ねぇ、俊先生のお母さまに紹介してね」
『えッ?あははッ、舞ちゃんの事を?』

笑って誤魔化してみたけど、ミニスカートの下の細い脚を組み直すと、真剣な表情になり舞子は更に僕に言った。

「私ね、俊先生の事、信頼できる大好きな男性(ひと)だって、家族に紹介したいの」
『舞ちゃん、、それは』
「だから、俊先生のお母さまにもお会いして、ちゃんとご挨拶したいし」
『舞ちゃん、それはダメだよ!僕は君を好きだけど、それは妹としてであって』
 
舞子が僕の話を途中で遮る

「俊先生が好きだって何度も言ってきたわ。妹じゃなくて、女性として」
『確かに、舞ちゃんには今までアプローチを受けてきたってわかってた、だから僕も必要以上に君に近づくことはなかったはずだ。それに僕は無理なんだ』
「どうして?」

その時、ホテルの入り口に薫の姿をみつけた。
丁度、タクシーを降りた所のようだ。僕はその場から立ち上がると、舞子も僕の視線の先を見たのだろう。僕に言って来た。