「、、あのね」
『大丈夫、時間が必要なら待つ事だって出来るよ、だけど
お願いだから、僕の事をただの同僚で、たまたま此処でこんな風になった
そんな相手になりたくないんだ』

僕はそう口にしながら、彼女の柔らかい唇を親指でなぞった。
見つめ合った彼女の瞳が揺れている。その瞳をみつめて今まで感じたことのない、愛おしいという感情が溢れてしまいそうになる自分に驚いた。
僕にとって初めての感覚だったし、自分でも相当焦っている。
それを誤魔化すように、彼女に自分の顔を近づける。

彼女が静かに瞳を閉じた

彼女の唇までギリギリのところで・・僕はためらってしまう
そのまま顔を彼女から引いた
数秒の後、彼女の瞳がゆっくり開かれて、僕はうっすらと笑みを浮かべた。
この気持ちをはぐらかす様に、彼女の額に唇をつける優しいキスをした。

短いキスの後、再び彼女の瞳を確認すると、彼女の瞳が潤んでいるのがわかった。

”たまらない”

僕は彼女を胸の中にゆっくりと抱きしめて 優しく髪を撫でた。

『君が時間を大切にしたいなら僕は待つよ。 どうしたんだろうなッ とっても素直な気分になれて不思議なんだ。充分なオトナな男だからカッコつかないけど、僕も君を大切にしたいから』

彼女が身動きもせず黙ったまま僕に抱かれている。

僕に身体ごと抱きしめられていた彼女の両腕が動いた。その両腕が僕の首にまわされてギュッと抱きしめてくる。僕も彼女の身体を力強く抱きしめると、僕は彼女の胸の中でくぐもった声で呟いた。

『唇にキスしたらもう、止められない・・だから』