〔愛すればこそ〕



私のスマホに残された着信は俊からで、折り返してみて元気のない声に心配で、
たまらなくなる。今すぐに来てほしいと言って来た言葉に心が締め付けられる。
前はあんな風に気持ちを押し付ける事はなかった。
俊に何かあったのかもと考えているだけで、とっても不安な気持ちになって
急いで俊のもとに向かう事にした。



ピンポ~ン♪ピンポ~ン♪
ホテルの部屋のドアベルが鳴ると、僕は慌てて部屋のドアを開けた。
ドアを開ければ、目の前には薫がいると思っていたからだ。笑顔でドアを開けたはずなのに、無意識に自分の顔が曇るのがわかった。


「俊先生ッ!来ちゃった~、、入ってもイイ?」
『・・舞ちゃん、あッ、ちょっと待ってて』

僕は舞子にそう言うと、一旦 部屋のドアを閉めて、彼女を部屋の外の廊下で待たせた。舞子を僕の部屋に入れるわけにはいかない。
舞子の気持ちを薄々感じている僕だからこそ、それがあってはいけないんだ。


『お待たせ、ラウンジでお茶でもしよう』
「・・・うん」


ラウンジに誘うと、舞子が納得いかない表情をしていた。僕はそれを見ないようにして、前を歩きだす。
フロントが見えるカフェに、対面に座ってホットコーヒーを注文すると、僕は黙ったままフロントやエレベーターホールを眺めていた。
舞子が僕をジッと見てるのに気づいた。