「坂本先生、本当にいつもありがとうございます。、、でも、もうお迎えは」

私がやんわりと坂本先生にお迎えをお断りすると、坂本先生がフワッと微笑んでから「遠慮しないで下さいよ。僕は好きでやってるんだし、それに薫先生に、、薫さんに逢えるからね」って返してくる。

坂本先生の好意は、少し前から気づいていた。彼は私の状況を考えながら、強引に私を引っ張ってくれる。本当に優しくしてくれるし、優人の事も大事にしてくれた。
でも、俊の事が忘れられない私は、彼の気持ちに応えられない
坂本先生にはその事をちゃんと伝えないとイケナイと思っていた。

スマホに着信の跡があって、相手を確認したら俊だった。病院に着いてから、優人の定期検査の間に俊に電話をした。
3回のコールの後に彼は出るけど、なんだか様子がおかしい。

「俊? 電話くれてたみたいだから」
『ああ、、うん』

彼の、俊の声が沈んでいた。 何かあったのだろうか?

「ねぇ、どうかした?」
『うん? いや別に』
「何だか元気がないわ。どこか具合が悪いの?」
『いや、何処も悪くない、、薫、僕が具合が悪かったら君は僕の所にすぐに来てくれる?』
「どうしたの?俊」

彼にしては子供のように駄々っ子みたいだった、そして更に俊が言った。

『薫、今すぐに来て』
「俊?」