『それから、驚くと思うけど、偶然に君の妹の舞子ちゃんとアメリカで知り合ったんだ。君との事はまだ何も言えないでいる。いずれはちゃんと言わなくちゃって思ってるけど』
「舞子? 俊が舞子と知り合いに?」
『うん、知り合ってもう一年以上になるかな。君より長いな、それに、何より君より積極的だよ。僕が負けそうになってしまう』

薫の顔が強張っていくのがわかった。いやいや、舞ちゃんとは、そんな関係にないから、、

「俊と舞子って?、、その?」
『心配してくれた? ははッ、、舞子ちゃんは妹みたいに接してるつもりだよ。舞ちゃんは米国で頼れる人がいないようで、僕だけだったから、かなり懐いてくれてるけど、、』
「そうなの?」
『うん、いつも女性扱いしないって怒られてる』

部屋を出て行く薫の唇に優しくお休みのキスをした。
そして耳元で囁いた。『今でも僕は薫だけだから』



数日後、僕は見てはイケナイ現実を偶然にも見てしまったんだ。
薫にどうしても逢いたくて、一時だけでも逢いたくて、彼女が住んでいるマンションの近くまで足を向けた。
丁度、マンションのエントランスを出る所だった。薫の横にはご主人らしき男性が子供を抱っこして、駐車していた車に乗り込み出かけるところだった。

僕はその現実から思わず目を背けた。

”誤解”なんて こうやって作られていくんだろうな。
まさかその男性が、薫とその子供とはまったく関係のない間柄なんて、言われないとわからないぐらいで。
その男性の薫を見る目が愛しそうだったから。