君の瞳が 明らかに動揺して揺れているのがわかった
僕は君を困らせているんだろうね。
『暫く日本にいるんだ、電話してもイイ? 前の番号、変えただろう?』
「ああ、ええ、携帯が故障して、それに色んな人が知ってる番号だったから」
『そうか、僕のスマホ、あの時のままで繋がるけど、君のナンバーを教えて』
薫は自分のスマホをバックから取り出すとディスプレイを開いた
待ち受けのフォトが赤ちゃんだったから、きっと薫の子供のフォトなんだろう。
僕はその赤ちゃんのフォトを、薫に『見せて』って言うと、少しだけ戸惑うように彼女がスマホを渡してくれた。
男の子だった。子供の笑顔に僕もつられて微笑んだ。
『可愛いね、お座りしてご機嫌そうだ』
「ええ、そう。この頃は、8か月ぐらいの歳だったの、今は2歳を過ぎたわ」
『そうか、もう2歳なんだ。 あっ、電話番号教えて』
薫の電話番号を教えてもらって登録すると、彼女に言った。
『あのさ、今日の事を後悔して悩まないで、悪いのはすべて僕だから』
「・・・うん、私は大丈夫よ」
『薫のご主人には悪いけど、もう後戻りできない』
「えッ?・・・あッ、あのね・・」
薫のその言葉の続きを聞いてさえいたら良かったのに、僕にはもうひとつ告白しておかなければいけない事があると思ってしまったんだ。



