「先輩ッ!本当に驚きましたよッ! 突然に帰国するんですから、帰るなら帰るって・・・ね・・・・・あっ・・・・それじゃ僕はまた今度・・じゃあ、薫先生、お先です」


俊は壇上から降りて私からずっと目を離さない
木村先生の話なんて聞いてないかのように・・・

私は木村先生に軽く会釈をして、苦笑いをして手を振った
俊の視線がずっと私に向けられているから・・・一回離した目を・・どうにも合わせられない

『薫・・・ねぇ・・・挨拶してもイイ?』
「・・・・?」 

私は俊のその言葉の意味がわからず、その時、彼の目を見つめてしまった
俊が私の座る前に膝を立てて座り、私の身体を彼の腕が包み込む

一瞬の出来事に 私は声を出せない。俊にハグされたまま 身動きさえ、呼吸さえ出来ない

暫くして・・やっと声が出せた


「・・・俊・・・・あの・・」

俊が私の身体をやっと離して、私の前で立ち上がる
そして私に手を差し出した

「・・・ん?」
『ほらッ・・行こうか』
「・・どこへ?」
『ゆっくり話ができるところなら何処でも・・』
「・・・ダメよ」
『僕の話を聞いて欲しい・・それもダメ?』
「でも・・」
『お願いだ、2年もずっと君と話がしたくて我慢してたんだからな・・いいだろ?』
「・・・」