『僕の名前は片瀬俊、34歳。君の名前聞いてもいい?』
「はい、、大澤薫です」
『カオルさんか、イイ名前だね 年齢聞いてもいい?』
「知っても何にもなりませんよ。それに、、」

”貴方には関係ないでしょ”って言葉を飲み込んだ


その後、再びの沈黙。彼の顔が強張っているように見える。
どうしたの? えッ 何か私間違えた? でも、、、
確かに露骨に態度を変えた私だけど、正解がわからない。こんな時、どうお話を
持っていけばいいのか頭の中に上手い言葉が浮かばない。

俊は助手席に座る彼女をチラッとみると、小さく吐息を漏らす。
彼女が突然、攻撃的になった? 何か気に障る事 言ったかなぁ? 通常、女性に対して気を配る話し方をしていなかったツケがここに来て失敗してしまったのか!だけど、彼女が可愛いのは、そんな中でも百面相状態な事だ。

世田谷の成城学園前の駅を通り過ぎた。このままなんていうのはナシだぞ、
早いとこ彼女の連絡先とか聞きださないと。 焦るオレ

彼女が突如、話し出す。


「あの、、そろそろ実家に近づいてますので、、このあたりで」
『えッ、家の前まで行くよ』
「でも、、」
『迷惑なら仕方ないけど、雨も本降りだし、気にしないでほしいな』

彼女は申し訳なさそうに話す
「では、そこの角を右にお願いします」


辺りはどの家も豪邸で、家と家の距離がある程度離れており敷地面積も
かなりの大きさだ。建物の高さも低いので、開放感にあふれている。
思っている事を素直に話した僕に、彼女はバツの悪そうな顔をする。


『豪邸ばかりで凄いな』
「あの、此処で止めて下さい」
『えッ』
「此処なんです。実家」

静かに車が停車した
重厚感と高級感のある門構えから少しだけ手前だ。門から玄関までのアプローチもゆったりと長そうだ。雨の中でもボーっと門前の間接照明が緑の木々を綺麗に映し出していた。まさに豪邸そのものだ。

「本当に どうもありがとうございました。」
『うん』


ドアを開けようと 彼女が手をかけると彼が彼女の肩に触れた

『ちょっと待て!
 君の連絡先、電話もアドレスも、すべて知りたいんだけど・・』