「それじゃ、私、急ぐから・・後でね!」


走り去った姉の後姿をみながら舞子が坂本に聞いた。
「ほんと、綺麗なままのお姉ちゃんだわ。ねぇ、坂本さん?」
「・・ええ、そうですね」

舞子がそう言うと 坂本も笑顔でそう言った。舞子は直感的に坂本が姉を好きだというのを理解した。

「ところで・・お姉ちゃん、あんなに急いで何処へ?」
「ええ、循環器の学会ですよ。ポイント制ですからね。登録しなくちゃ専門医の資格がなくなりますからねッ。 薫先生、頑張ってますから・・」

「循環器の学会? あっそれ・・俊先生が」
「・・うん?」
「いえ、何でもないです」



薫が運転する車の助手席に置かれた循環器学会のパンフレット
特別講演の欄に ”片瀬 俊”の名前が載っているなんて
夢にも思っていない薫だった。


会場地下の駐車場に車を停めて、上階の学会会場へ急いだ
受付で無事に登録を済ませると、ほっとして力が抜けてしまう。
近くにある椅子に腰掛けると、「・・・ふ~~ッ・・・間に合った」と声に出してしまう。


ふと周りを見渡していると 見覚えのある顔に出会った
木村優一だった。 ああ、彼は循環器内科から小児科に?のはずじゃ

私が木村先生を見ていたら、気づいたみたいで笑顔で私の方へ近寄って来る