『舞ちゃん、医者ってね、誰でもなれそうでなれないんだよ。辛いことも苦しい事も多くてね、そんな時に家族の支えが必要になると思うんだ。舞ちゃんに家族がいないのなら仕方のない事だけど、いるんだからさ』

「うちの家族は、私の存在よりお姉ちゃんが一番大事なの。・・パパはいつもお姉ちゃんの事ばかり心配してて、ママだって私より体面とかお姉ちゃんに気を遣って・・」

舞子は、自分の家族の事ををはじめて僕に聞かせた。
僕だって、舞子には何一つ話していなかったけど。


「うちの家族もね、パパもお姉ちゃんもお医者さんなの」
『・・そう』
「でね、そんな二人を見てたから、同じ仕事なんて選ぼうとさえ思わなかったわ。俊先生を見てて、この仕事がしたいって、俊先生とずっと一緒にいたいって」


これは 舞子の僕への”告白”だった。
僕は舞子を可愛いと思うことはあっても、愛してると思うことも、舞子とそんな関係になるという事も考えた事がなかった。いや正確に言えば、考えないようにしていた。
だから、舞子のこの告白めいた言葉に、どう返事をするべきか悩んだ


「いずれは俊先生だって日本に帰国したら、どこかに勤めるでしょ?うちのパパは慶生大の学長してるの・・だから・・」

『舞ちゃん!学長って・・君、・・まさか慶生大学の大澤学長の?』

「あら、俊先生うちのパパを知ってるの?」

『・・薫の・・妹?』

「かおる? って・・お姉ちゃんの事も知ってるの?」


偶然にしてもこの展開は、僕は今、何を言うべきなのか
終わってしまったと思っていた運命の見えない糸が まだ君に繋がっていたんだろうか?