私は大きな決断をした。ひとりで愛を注いで育んでいこうと決心した。
そう・・そこには 私の愛する俊もいない。子供と二人だけの世界を選んだ。

父は私の決断を反対した。 何もそんなに苦しい決断をしなくてもいいと・・
それでも、私の強い意志を尊重してくれた父は協力をしてくれた。

父の協力を得ることで 彼から・・俊から自分が遠ざかる事ができる。
そう考えた。そうでもしなければ、彼は私を必ず見つけて受け入れようとするだろうから。

父が話す言葉に頷きそうになる自分に、ブレーキをかけた。


「薫、お腹の子の父親は、お前の望む相手なんだぞ。そしてその相手がこんな事件の後でも、お前に会いたがってるんだ。どうだろう、会ってみるか?」
「・・・だから、パパ、彼には関係ないの。お願い彼を、俊を巻き込まないで」
「でも、お前だって、それに生まれてくるそのお腹の子供には父親が必要だ。そうだろ?」


私だって彼の優しい瞳が見たくて、彼に会いたくて・・
苦しくて悲しくて、でも今の私は彼にとってお荷物でしかない。
世間に向けて、自身に起きた不幸を明らかにしていく作業は
私の自尊心も、私の身体も・・すべてをさらけ出すものだった。

彼が私以上に苦しむ姿をみたくないし、そんな状況下に彼を巻き込むのが耐えられなかった。

妊娠悪阻(つわり)が、いつまでも続いて等々倒れてしまったために、父が紹介してくれた山○病院へ緊急入院する事になった。不思議な偶然に心が痛んだ
そう私にとっては、こんな小さい俊との思い出も、今ではすべてだから。