母子手帳の父母の名前を書く欄に、父親の名前を書いていなかった。結婚をしていないシングルマザーだって印はないから、そう言われても仕方ない。


私の中で この子の存在に気づいたのは あの事件の後だった
暴行された次の日、産婦人科で検査をした
もちろん、身をもって 俊やその家族、それから私を脅かすあの人達を
告発するためには必要だったから、勇気を振り絞った。

妊娠反応が陽性という言葉に戸惑った。

有り得ない事だけど、もしかしたら? の疑いをはらすためにも検査をした
まずはっきりしたのは、暴行によって生まれた命なのではないと言う事
超音波で確認すると、赤ちゃん自体は8周の頃の状態だと確認できた。

私と俊の赤ちゃんに間違いはなかった

父の看病と、仕事にと忙しい日々を過ごしてきたから
体調の変化に気づく事がなかった

まず、考えたのが 俊にどう言うかだった。

たとえ、私がこの後、告発をして上手くいったとしても、私の身体の傷は消えない。まして、俊だって・・同じだろう。 それに周りだって皆が知る事になるだろう。


私とこれからも関わる事で 彼が・・・俊が苦しむ事になる


いくら、坂上教授の魔の手から逃れる事が出来たとしても、世間の目から彼も、それから生まれて来るこの子も 奇異な目でみられてしまう


検査ではっきりした私の妊娠、暴行された後なのだから
きっと そんな妊娠はなかったモノとしてしまいたい・・・

そんな事を考えた日もあった。
でも、無理。私の身体の中で確実に育む命に、私自身が最悪な結末を下す事など出来ない
私の愛する俊との赤ちゃんを・・・・