日本を発つその日は、五月雨の晴れ間、5月のさわやかに晴れ渡った空が広がっていた。僕の気持ちとは正反対で。

あの日、薫に病院で偶然に出会ってしまってからというもの、叶わぬ願いなのに 
夢の中では毎晩 薫が現れて、僕を苦しめていた
僕が触れようとすると、薫は僕から逃げてしまうんだ。

これからは、きっとずっと海外での生活を送る事になるから、日本のスマホの契約はもう必要ないのに、ずっと解約ができない。手から外せないんだ。

もしかしたら・・・薫から連絡が来るかもしれない。


僕はいつまでも情けない男だった。良いよ、笑ってくれたって
心で彼女を求めてしまうんだから、仕方がない。

考えてみたら、僕と薫、いつも電話は僕からだったと思い出す。
飛行機に乗り込んで、電源を落とす前に彼女のナンバーを出してみた。

薫が僕の前からいなくなった時、何度もこのナンバーを押した
いつも発信の呼び出しが鳴り続けるだけで、けして彼女の声は聞けなかった。


一度だけ一度だけ、僕の望みを叶えてくれ。
最後に君の声を聞きたい・・・これで終われるから。

僕はそのナンバーをタップすると耳にあてる

ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪
ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪ツルルル~ル~♪


やっぱり君は出ないよな