玄関の横の壁に持たれて 夜空を見上げた。

ねぇ、やっぱり東京の夜空は何にも見えないのね。
一つでも空に輝く星がみえたら、幸せな気持ちになれるのに。

階下をみるとエントランスの上なのか、通りが見えていた。一台の車が停まり
俊が丁度車から降りるところだった。

「俊・・・」
名前を呼んでみて、その後、声が出せない現実と直面した

ホワイトパールの高級外車の運転席から俊が降りると、続いて助手席のドアが
開いて女性が降りて来た。その女性は俊の方に行くと腕を掴んで離さない。
私はその光景に目を背けた。気になるのに見ていられない。

しばらくして見てみると、女性が俊に誘導されながら運転席に座るのがみえた。
運転席のドアを閉めると、覗きこみながら何か話している。
遠すぎて会話の内容は聞けないし、俊の表情だってみえない
相手の女性は、今日の大月先生が言ってた教授のお嬢さんだと思った。

私の中で不安がどんどん大きくなる
それでも帰る事ができなくて、私はそこに立ちつくす。
エレベーターが開いてネイビースーツ姿の俊が出て来た。疲れた顔して下を向いて、此処に立つ私に気づかない。
玄関まで2メートルのところで、私の存在に気づいた俊は少し驚いた顔をする。


『・・薫?』
「お帰りなさい。待ってたの、確認したい事があって・・」
『確認?うん、じゃあ、ひとまず部屋に入ろう。寒かっただろう?』