帰りの車にしても 一騒動で、、
彼の車に誰が乗るかで、彼の知らないところで大じゃんけん大会
これも、あきらめてた私。でも俊の一言で決まった。

”あのさぁ、僕、彼女と待ち合わせしてるから乗せないよ”

そんなストレートな告白に、誰もが サ~っと潮のように引いて
俊の車の助手席は空席になっていた。
スマホのメッセージに待ち合わせ場所が書かれてあって、さすがに今は公表する
事はできないけど、一緒にいる時間が増えた事が嬉しかった。

午前中は伊豆半島までドライブして、高速を飛ばして都内に戻ると夕食を
楽しんで、私のマンションまで送ってくれた。


車から降りてドアを閉めると 彼を見て手を振った
彼は 微笑むと、私の立つ場所に運転席が来るように移動した
運転席のウィンドウが下げられ 彼が笑顔で黙ってる。

「うん?・・何?」
『薫、お礼は?』
「えッ・・ああ~ッ!家まで送って下さりどうもありがとうございました」

ペコって頭を下げてお礼を言う私に、とっても不満そうな顔になる。

『なんか・・残念だなぁ。もっとちゃんとお礼をしてもらえると思ったのに』
「ええ?ちゃんとって?」
私がそう言ったら 俊が自分の頬を私につきだしてきてキスを迫る。

「まったく子供みたい、誰かに見られたら・・もう」

車に近づくと、私は俊の頬に軽くキスをしようとした。なのに、
突然彼の顔が真正面を向いて、俊の唇と重なる。少しだけ長いキスのあと、
離れた俊の唇をじっとみつめてしまい顔が熱くなるのがわかる。


『ご馳走様、 じゃあな。中に先に入って』
「うん、じゃあお休みなさい」
『うん、おやすみ、また明日な』

私は走ってエントランスに入ると、もう一度車の方を見て俊に手を振った
この時は本当に幸せだった。