そう言うと、私の前からまたラグの上に座りなおして読みかけの本を開いて、
何もなかったかのようにしたの。


”ねぇそれって酷くない? もう少しネバッテよッ!”


俊が本を見ながら微笑んでいる事を知らない。本当にあなたってずる賢い。
私からのキスを待ってるのだから。


「俊・・こっち向いて」
『えッ?!あっ・・』


私に振り返ったと同時に、俊に重なる熱い唇に俊の瞳が驚きで見開いていた。


ねぇ、瞳を閉じてロマンテックなキスを頂戴よ
おい、今、呼び捨てにしただろ。
えっ、何か不都合でも? 
もう一度だけ、聞かせて。

「俊、好きよ」

箱根までの時間、大丈夫かな?
貴方に愛される時間もないって事?
いいや、その時間は充分にあるよ。薫、こっちにおいで。