しばらくあのまま呆然としてて、なんとか動けるようになるとすでに試合は始まってた。
……おかしい。体がおかしい。
胸がきゅーっとなって、まだ心臓がうるさい。
それに、ずっと結城くんを目で追いかけてる。
「きゃー!!結城くーん!」
名前が聞こえるたびにどきどきが増える。
もう一回外に行こうかな…と思って、思い止まる。
応援してるって言ったのに、見なくていいのか。
嬉しそうにしてくれた結城くん
何でかは分からないけど。…あんなに嬉しそうに笑ってくれた人を裏切るのは人としてダメなんじゃ…。
平常心、平常心…と唱えながら、遠目の隅から覗いて見る。
すぐに目は結城くんを捉えて離さない。
取っては取られての展開で、球技大会のレベルじゃないように思えてきた。
バスケ部同士の試合のような激しさを感じながら、何度も心の中で頑張れを繰り返してる。
息をするのも忘れるような展開の中、ついに終了の笛が鳴った。
「勝ったー!」
女子たちの大歓声が響き渡り、あちこちで賑やかな声が上がってる。
「ありがとー!!」
下から男子が手を振っているみたい。
私には遠くて見えないけど、黄色い歓声は止まらない。
「結城くん!かっこよかったよー!」
「結城くーん!!」
結城くん……。
見たい欲が勝って、顔を頑張って覗き込めば、いつも通りの笑顔で手を振ってる結城くんがいた。
…良かった。いつもの結城くんだ。
そこでやっと心が落ち着き始め、普段のように人気者の結城くんと取り囲む女子たちを眺められる。
端から端まで満遍なく手を振ってありがとうと言ってる結城くん
それを何回も何回も繰り返してたから、長めだ…。なんて思ってたら、急に持ってたタオルで顔を隠し始めた。
長めの前髪から覗く目元しか見えてない。
そして、すぐにその場を離れる結城くんに女子たちはすごく残念そうだったけど、他の男子にもたくさん声をかけていた。
「……俺、なんか変。」
タオルに吸収されていく独り言は誰にも気づかれない。


