一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

今日一日ではPCは直らず、姫野さんに預ける事になった。
遅くても明後日までには直るらしい。

もし急ぎでPCを使いたかったら、いつでもうちに来て構わないと姫野さんは言ってくれた。
ライムとレモンも喜ぶから、と。


最初から最後まで、姫野さんは優しい近所のお兄さんだった。
自分にお兄ちゃんがいたらこんな感じだったんだろうか。

姫野さんは作品制作で手こずっていたところも見てくれた。
説明がすごくわかりやすいなと思ったら、会社で新人教育にも携わっていると言った。
姫野さんみたいな人が先輩だったら、きっと頼もしい。



PCを預けた分、行きよりも荷物は軽くなったのに、家に向かう足が重い。

ナナセちゃんには今、付き合っている人がいて幸せそうだと言っていた。
それを聞いて安心したし、嬉しかった。

だけど頭の中は、帰ったらクロエさんは眼を合わせてくれるのか、という不安の方が大きかった。

自分の勘違いなら良いけれど、勘違いだと思えない。

口数は少ないし、表情もあまり変えない。
それでもあんな風に接された事はなかった。