一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「妹さんの付き合ってる人が家に遊びに来て、ナナくんとも挨拶したんだって」

ナナセちゃんの恋人……?

「それで、その付き合ってる人の声が小さいだとか、これじゃ妹を任せられないだとか言ってたんだよ。
まぁ、つまり僕はナナくんの()け口にされたっていうわけ」

姫野さんは苦笑する。
七星さんがそういう事を言うのは意外だった。

「七星さんでも、そんな事言うんですね」

「それはやっぱり、妹が可愛いからじゃないかな。
ネガティブなフィルターがかかっちゃってるんだと思う」

「ネガティブなフィルター?」

「うん。僕も妹に彼氏を紹介されたら焼きもちを焼いて、その人が何をしても全部にケチつけたくなっちゃうと思う。
もちろん、そんなのは一時的な感情だし、口にも態度にも出さないけどね。
ナナくんだって、きっとすぐに気が変わるよ。
さっきの電話でも最後には、妹が幸せそうだったから良いっスけどって言ってたしね」


ネガティブなフィルター………。

自分も茉莉香の彼氏に、きっとかけてしまっていた。

彼は、緊張を隠すためにペラペラペラペラしゃべっていたのかもしれない。

茉莉香が歩きづらそうにしている事も気付かないくらい、彼女の友達()に好かれようとか、彼なりにいろいろ考えていたのかもしれない。


茉莉香は少し騙されやすいところもあるけど、決して馬鹿なわけじゃない。
いつも聡明で、正しい事をしようとする。
そういう子。

そんな茉莉香が、馬鹿な男と付き合うわけがない。


―――自分が恥ずかしい。