一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

クロエさんの様子は、明らかにおかしい。

いつもよりも、もっとずっと遠くにいるみたい感じがした。

そもそも、自分はクロエさんの近くになんていないのだろうけど。



クロエさんがカイトと言った事については何も聞いていないままだ。

本音は、カイトさんの事が気になる。

どんな人だったのか、具体的にはどんな関係だったのか。

姫野さんに聞けば、もしかしたら何かわかるかもしれないけど……。
一緒に暮らしているからって、クロエさんの事情にズカズカと踏み込んで良いわけない。


一か月だけの、関係だから。

契約が終わったら、もう二度と会わないかもしれない。

クロエさんは、この夏の事を二度と思い出さないかもしれない。

自分達はそんな関係。


だけど俺は、クロエさんとの間に起きた事は全部忘れないと思う。

それが自分に向けられたものじゃなくっても。



コマンドキーとSキーを押す(    保存    )と、電話を終えた姫野さんが声を掛けた。

「アオイちゃん、ごめんね。
なんか話が長くなっちゃって」

「何かあったんですか?」

「問題があったってわけじゃないんだけど…。
ナナくんって、そんな風に見えないけど妹がいるんだよね」

胸が引きつった。


ナナセちゃんの事だ。