一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

ミントチョコだけじゃなくて、自分が好きになるものは、どちらかと言えばマイナーな物が多い。
だから七星さんと好きな映画や小説が合った時には驚いた。

姫野さんにその話をすると、嬉しそうに笑った。

「ナナくんと合うなら、僕とアオイちゃんも合いそうだね。
僕とナナくんも好みが似てるから。
あ……ちょうどナナくんから電話だ」

自分の事は気にせず、電話に出るよう姫野さんを促した。

姫野さんはどんな事もさらっと言う。
「合いそうだね」なんて、思ったとしても自分なら相手に言えない。
姫野さんの素直さが羨ましい。


姫野さんのPCは重いデータを扱っても滞る事がなく、自分のPCがいかに重いのかがわかった。
起動画面ではマークはまだ、くるくるくるくると回ったままだった。



昨日、クロエさんはみんなが帰るとすぐにどこかへ出掛けてしまった。
「待たないで良いから」とだけ、突き放す様に言って。

ついさっきまでは、そんな態度じゃなかったのに。


夜中に目を覚ます度にクロエさんの車がないか確認したけれど、いつもある筈の車はない。
ちぃちゃんは主人の不在が寂しいのか、俺の部屋まで来た。

結局ずっと眠れなくて、朝方に車が帰ってくる音がしてから、少しだけちぃちゃんと眠った。


クロエさんが仕事に出る前、急いでお礼を言いに行った。
姫野さんにPCの話をしてくれたから、見てもらえる事になった、と。

クロエさんは「偶然、話の流れで口にしただけだから。お礼はヒメにだけ言って」と、やっぱり突き放す様に答えた。

おそらく偶然ではないだろうけど、言及はしなかった。
と言うよりも、出来なかった。


一度も、目を合わせてくれなかったから。