一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「味見して」

クロエさんに差し出されたカレーを口にすると、スパイシーな味と複雑な香りで満たされた。

「おいしい!」

「辛くない?」

「もっと辛いのかと思いましたけど、丁度良いです」

「あまり辛くするとナナが食べられなくて」

「明日は七星さんも来るんですね」

「ナナとオレの友達2人と、その友達の奥さんが来る。
ナナのお姉さんでもある人」

「七星さんってお姉さんいるんですね。
もしかして………妹さんも、いますか?」

「確かいたと思う」

「……そう…ですか」

今朝、機材を取りに来た七星さんと顔を合わせた時に、ナナセちゃんは七星さんの妹じゃないかと思った。
やっぱり、二人はよく似ている。

ナナセちゃんは兄と姉がいると話していた気もする。
付き合っていた時に、お互いの家族についても話していたのに……。
ちゃんと覚えていない自分はやっぱり最低だ。

きっとナナセちゃんは、俺が話したことをちゃんと覚えている。
そう思うけど――少ししか付き合っていない、別れの言葉も返さない恋人なんて、記憶から消してるかもしれない。

こうやって後悔するくらいなら、なにかすれば良かった。

どうするのが正解だったのか、いまでもわからないけど。


ぐつぐつと音を立てる鍋を見ていると、急に身体を引き寄せられてシトラスの香りがした。
クロエさんの顔がすぐ近くにある。

「三十秒」

「え、三十秒って……」