一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

瑤子さんの突然の質問に、飲んでいたお茶をむせる。

「あ~…単刀直入過ぎたわね」

ごめんごめん、と言って瑤子さんは背中をさすってくれた。
瑤子さんの髪のカールが揺れる。

「大丈夫かしら?」

「大丈夫です、落ち着きました。
さっきの質問ですけど、恋人じゃありません。
本当に、ただの雇用関係です」

そう、自分とクロエさんは雇用関係。
一か月でおしまいの関係。

「そうなのね。
クロエが人と暮らすって聞いて、驚いたのよ。
あの子が長期間、人と一緒にいるって滅多にないから。
だから本当は恋人なんじゃないか、と思ったの。
友達と旅行とかも行かないし」

「そうなんですか?」

「そうね、私が知る限りでは。
この家にあるゲストルームも…あ、この家の事ってクロエから聞いたかしら?」

「いえ、あまり…」

「元々はクロエの母親が育った家なのよ。
つまりクロエの祖父母の家。
クロエはここで育って、祖父母も亡くなって、今は一人で住んでるの。
だからゲストルームもその時の名残りであるだけ。
ここでパーティーした時に、酔いつぶれた友達が泊まる事はあるみたいだけど」

うちのワガママ娘もね、と言って瑤子さんは羊羹をほおばった。

「人と長時間、一緒にいられないってタイプだと思う。
クロエ本人がそう言ったわけじゃないけど」

「瑤子さんは、クロエさんをよく知っているんですね」

「クロエの母親とすごく親しかったから…亡くなってからも、クロエが気になって顔は見に来ていたの。
あずさの面倒も押し付けたりね」

瑤子さんはチャーミングに笑った。