一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「うっそ。女の子だったの?!
どうりで……。男にしたら綺麗過ぎると思った……」

「まぁ…男とか女とか、性別なんてどっちでも良いけど」

「相変わらずだなぁ、クロエさんは」

男性と間違われる事には、もう慣れていた。
別にそれで傷ついたりも、ショックを受けたりもしない。

むしろ、間違われない事に慣れていなかった。

「あの……。クロエ、さん…どうして俺が女だってわかったんですか?」

「見たらわかる。
昨日だって、女の子がこんな時間に一人で酔っ払うのは危ないから……って、声を掛けたし」

「そう…なんですね……」

「着替えてるところは見てないから。
バーから(うち)に運んで、服を渡して、ちょっと目を離したら自分で着替えてた」


クロエさんの話によると俺はバーで泥酔し、これから向かうはずだった住み込みのリゾートバイトをドタキャンされ、今からどうやって割の良いバイトを見つけたら良いんだと、グダグダくだを巻いていたらしい。


………まったく記憶にない。


でも、ドタキャンされた事は事実だった。
この夏は、来年からの一人暮らしの資金作りをしようとしていた。

なのに出発当日、荷物を完璧に詰めたキャリーバッグを引いて現地に向かっている最中でのドタキャンの連絡。
ホテルでボヤ騒ぎが起きたとかで、とても営業出来る状態ではないから御免なさいね、と謝られてしまった。

このまま家に帰るのもなんだし、どこかで飲もうと決めたような気がする……。


「じゃあ、オレが代わりに雇うって言ったことは覚えてる?」